食道:esophagus
< 食 道 疾 患 >
食道は、飲食した時に食べ物、飲み物などが通る単なる筒状の路です。非常にシンプルで、こんな部位に病変が起こるとは考えにくいのですが、実は大変な病気が生じることがあります。
逆流性食道炎は有名で、みぞおちあたりが焼けるような症状(胸やけ)が、起これば胃カメラを行い、食道と胃の境目に粘膜の傷がないかを確認してください。ご存じのように胃液は消化には必要なものですが、強い酸(塩酸)ですから、睡眠時などの体位により食道に逆流すると、傷があれば症状が出ることになります。特に機能的に食道側に胃粘膜が突出しやすい方は(食道裂孔ヘルニアといいます)慢性的な難治性食道炎となってしまいやすいです。食べ物に含まれている化学物質、発がん物質などを取り除くことはほぼ不可能で、知らないうちに食べてしまっています。
特に飲酒をされる方は飲酒で食道炎が起こります。飲酒と喫煙をする方は、気道に入ったタバコの煙に含まれる有害物質を繊毛の働きでせっかく痰として対外に排除してくれているにも関わらず、日本人は痰を出すのは苦手で、飲み込んでしまっているわけです。食道がん発症のリスクが高くなるわけですね。
消化器系ではなく耳鼻咽喉科、口腔外科の範囲になるのですが、喉頭がん、咽頭がん、舌がんなどの口腔がんも喫煙者が断然多く、関係しているといわれています。
ご自分の大切なご家族、あるいは社内の同僚たちに副流煙がいかないように、禁煙をおすすめします。
胃:stomach
< 胃 疾 患 >
ピロリ菌について
ヘリコバクターピロリ菌が発見されるまでと、その後では胃潰瘍や胃炎、胃がんの成因を考える時に、この菌を無視しては語れなくなりました。
1983年(昭和58年)にオーストラリアで、胃に住んでいる尻尾のある細菌が見つかり、世界中を驚かせましたが、当院の姉妹医療機関の新浦安虎の門クリニックでは、1990年(平成2年)にOPENしてしばらくして、ピロリ菌検査+除菌を行っていました。当時は日本には検査薬がまだなく、やむを得なくヨーロッパから尿素試薬(初期の頃は試薬でした、C13同位体)を輸入して呼気テストを行い、陽性者で治療希望者は、ヨーロッパ式の除菌薬を14日間投与していました。
当時あまり症例はなかったのですが、イギリスに赴任される外交官の方から加療の希望があり除菌をして治癒しました。後日談ですが、その方が数年後に帰国され別件でうちのクリニックを受診された時に、イギリスでもまだあまり治療実績がないのに、なぜ日本で治療できたのかを向こうのドクターが不思議がられたとのことでした。
そのころは、内視鏡を専門としている医師たちのほとんどは、細菌が胃液内で生きられるはずはなく、まゆつばと言われていましたから、除菌を勧める医師はあまりなかったのです。じゃ当法人ではなにを根拠にピロリ菌の存在を確認して治療に踏み切ったのかということですが、簡単です。日本国内の議論より、WHOの論文を信頼したから、他院より数年早く検査や治療を行ったというだけのことでした。
この話になると説明が長くなりますので、これくらいにして、ピロリ菌検査がとても大切で、ぜひやっていただきたいと考えております。
特に喫煙者の方は、唾液の中にタバコ由来の発がん物質があり、正常な元気な胃粘膜だとご自分の免疫力で処理できますが、ピロリ菌感染者は胃粘膜が護れなくなり、がん化するのではと考えられます。
バリウム検査だけではなく、時には胃カメラを行ってみてください。
ピロリ陽性なら、タケキャブ、クラリス、サワシリンの3剤での1次除菌を行ってみてください。1週間治療をお願いすると思います。この組み合わせなら 93%くらいの方が除菌できます。万が一耐性などの問題で、不十分になった場合には、2次除根をおすすめします。ここまでが保険適応となります。
胃がんについて
胃がんといっても組織的に進行が速いもの比較的ゆっくりなものなど、いろいろあります。早期に発見し、内視鏡手術ができる状態で見つけるためには、健診時に内視鏡を行う方が有利です。
十二指腸:duodenum
<十 二 指 腸 について>
バリウムでは全体は観察できないので、球部、下行脚の一部までが見えることがあります。内視鏡でも観察範囲はほぼ同じ部位となります。
理由がわかりませんが、あまりがんが発症しない部位です。有名なのでは球部の十二指腸潰瘍で、比較的多く、変形として観察されます。またまれですが、膵管の十二指腸への開口部であるファーター乳頭部にがんが出来ることがあり、黄疸が出るまで分かりにくい部位です。他に良性と診断していいですが、ブルンネル腫瘍というものも時に見られます。
十二指腸にはがんはまれですが、他の小腸も空腸、回腸にもがんはまれです。
大腸: colon
<大 腸 について >
大腸については、最優先の疾病は、大腸がんですね。国立がん研究センターの発表では、毎年約10万人の人が診断され、4万人以上の方が命を落としているとのことです。死亡率は伸びるばかりとのことです。
大腸がん検診という名前はついていますが、便潜血反応検査のことで、直接大腸内をカメラで観てはいません。他には以前から行っていて、今あまり推奨はしていませんが、注腸検査というお尻からバリウムと空気を入れてレントゲンで撮影する検査法があり、大腸カメラが予約いっぱいで検査できない時などに今も行われてはいますが、当然ポリープなどが疑われても生検は出来なくて、また大腸内視鏡の予定を組まなければなりません。
発生頻度順では、直腸がん>S状結腸がん>上行結腸がん>直腸S上部がん>横行結腸がん>盲腸がん>下行結腸がんになります。ほとんどが腺がんです。
当院(酒々井)ではお受けできませんが、新浦安では、大腸CT、大腸カプセル内視鏡なども行っております。
年々罹患者が増えているのは、食の欧米化、飲酒、喫煙、運動不足などによると言われています。
直近の話としては、まず沢山の方に健診で便潜血検査(2回法)を行っていただき、1回分でも陽性なら大腸カメラを予定することだと思います。
他に若者にも起こる病気としては、潰瘍性大腸炎、クロ-ン病などがあり、難病として指定されています。便に粘血便などが混じったらご相談ください。
肝臓:liver
< 肝 臓 疾患について >
一般の健診で優先的にチェックしている検査に肝機能検査(採血項目)がありますので、受検者のほとんどの方は、普通に健診を受けていれば、最初から肝機能障害の確認をされていることになります。
また、ウイルス性肝炎についても、B型、C型肝炎は自治体や会社の健診時にすでに行っている人も多いと思われます。DNAウイルスのB型は抗原検査を、RNAウイルスのC型は抗体検査を行います。C型検査で抗体陽性なら、さらに詳細の確認のために追加でPCR検査などを行いウイルスの有無を再確認します。
以前は治療法がインターフェロンなどしかなかったのですが、国家公務員共済組合連合会の虎の門病院肝臓科の熊田部長(当時)の研究で内服治療だけでも完治させることができると分かり、今はその治療法がメインとなりました。インターフェロン治療中は、副作用などで継続できない方もあり、また難治性のタイブもあり、苦労した記憶があり世の中変わるものだと感心しています。
着実に患者数は減っていくとは思いますが、放置すると肝硬変、肝臓がんになり救命できなくなりますので、肝炎検査が未受検ならぜひとも血液検査からおすすめします。
まれですが、食事とのかかわりがあるA型、E型肝炎もあり、その他D型などがあります。まだまだ発見されるかもしれません。
肝臓がんも増えていますので、早期発見のために健診では侵襲のない腹部エコー検査をおすすめします。肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓と最近では、腹部大動脈の確認も行っています。もし項目になければ、オプションとしての検査となりますが、肝臓がん、胆嚢がん、膵臓がん、腎臓がんの早期発見につながりますから、数年毎くらいには行っておきましょう。
胆嚢:gall bladder
< 胆 嚢・ 胆 管 疾患について >
胆道がん(胆嚢がん、肝外胆管がん、ファーター乳頭部がん)は胆汁の通る道に出来るがんで、基本的な治療は外科手術が中心となります。検査は描出不良部位もありますが、腹部エコー検査、造影CT検査、MRCP(膵臓疾患に記載)検査などが行われます。 ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)検査はMRCPが登場する以前は、膵炎や発熱などの合併症に気をつけながらやっていましたが、クリニックで行える手技ではなく、入院設備を備えた専門病院で実施されます。
良性疾患ではありますが、胆石症、総胆管結石症は、腹部エコーで偶然見つかることが多いです。胆石は胆嚢内にあり可動性があります。一般人口の約10%の方に胆石があるといわれています。一方胆嚢壁からできているポリープは体位変換でも動きません。胆管結石は直接エコーでは見えにくいですが、見える範囲で胆管拡張が生じていれば、その部位より十二指腸側の出口が石や腫瘍で狭窄していないかを、エコー以外の検査で確認が必要です。胆道がんの精査と同じく、造影CTやMRCPを行います。
胆道系疾患の全体にいえる症状ですが、有名なのは黄疸で、白目(眼球結膜)が全体的に黄ばんでないかを鏡で確認してみてください。総ビリルビンが 3mg/dl以上になると生じると言われています。
急性胆管炎、急性胆嚢炎については、最も多い成因は結石ですが、次に多いのは、良性・悪性腫瘍による狭窄です。クリニックでは対応しない方がよく、大至急消化器の専門病院を受診し、入院加療がベストです。遅れると敗血症が起こり致命的となることがあります。
膵臓:pancreas
膵 臓 がんについて
進行が早いがんとして有名ですが、早期に発見すれば問題はありません。そのためには、空腹時など条件を整えて、まず腹部エコー検査をおすすめします。
膵臓に嚢胞があるとされることがありますが、その時には、膵臓造影CTやMRCP(MRIを使った胆管・膵管検査)が必要ですが、当院すなわち酒々井にはありませんので、新浦安虎の門クリニックでの検査をおすすめするかもしれません。といいますのは、大病院へ紹介もできますが、混んでいたり、システム的に1回では検査できなくて数回受診が必要となる可能性があるからです。数名ご一緒になりますが予約で送迎なども検討したいと考えております。
その他、当法人内では行っておりませんが、内視鏡超音波検査(EUS)や最近では胃壁を通しての生検を行うこともあります。
膵 炎 に関して
急性膵炎は、男性では飲酒によるものが多いです。一方女性では、原因不明のものや胆石がきっかけになり炎症が起こることもあります。その他の原因としては、薬剤性、中性脂肪高値、感染症などがあります。
最近では、IgG4が上昇する自己免疫性膵炎も話題となっております。
膵臓は胃の後ろにある臓器で、胃腸のガスや腹腔内脂肪沈着などで観察しにくく健診のエコー所見で、膵臓が描出不良となっていることもあります。ご自分で確認してみてください。上手な体位変換を行えば、見える範囲も広がりますので、ご相談ください。